痛くしないで!~先生と始める甘い治療は胸がドキドキしかしません!~
 次の百合の歯医者の予約は来週だった。
 金属の出来上がりも含めて予約を取られているため、フライングで行っても金属は出来上がっていないだろう。それでも三嶌が言ってくれた言葉が耳の奥でこだまする。

 痛みは我慢しない様に……。

「……」

 家にある痛み止めを飲んだら手元に残るのは市販の痛み止めだけになる。
 三嶌から処方された頓服薬はよく効いたのだ。いまさら市販薬を飲んでもほんの気休めにしかならないと百合自身が気づいていた。

(明日は休診だから、お薬だけもらいに行こうかな……)

 本音は三嶌の声が聞きたくなっていた。

 あの優しい声で「大丈夫だよ」と言ってほしい。百合はそう思ったことが恥ずかしくて同時に胸が痛くなった。

 痛くなるばかり。

 痛みは引いた、そう思っても幾度と繰り返される痛みには種類もあって。その痛みに向き合うたび百合は思うのだ。

(薬なんか……効かないよ)

 薬などあるのだろうか。
 痛みそれぞれに対処してくれる万能薬はなんだろう。それを探したところで簡単に見つかる気がしない百合だった。
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