痛くしないで!~先生と始める甘い治療は胸がドキドキしかしません!~
Karte-3
 受話器を片手に桃瀬は顔の見えない相手にも満面の笑顔を浮かべて受け応えている。

「そうでしたか! いえ、大丈夫ですよ~、お忙しいのにご連絡ありがとうございます。次回のアポイントはどうされますか? はい、はい……では来週の同じ時間でご予約お取りしておきますね。はぁい、またお待ちしております~」
 
 桃瀬は受話器を置いて今日のアポイント表を見てほくそ笑んだ。

(十八時のでかいフラップオペが飛んだ……! これって今日の診察もう十七時半のデンチャー調整で終わりってことじゃない? ラッキー!!)

 ムフフ、と就業が迫ることに喜びを隠せない桃瀬の元に三嶌がマスクを外しながら受付にやってくる。

「はぁ、喉乾いた」

「炭酸水、冷蔵庫に入れておきましたよ!」

「ありがとう」

「あと先生、FOPキャンセルになりました」

「そうなの? じゃあ今日閉めれちゃうな。カルテ整理もしたいしちょうどいいなぁ」

「はやく終わっても先生は病院にいるんですよね~。カルテ整理も大事ですけど、たまには早く帰って下さいね」

 桃瀬の言葉に三嶌はフッと頬を緩める。その笑顔に桃瀬は眼福とばかりに見つめ返し思う。

(見てる分には良い。目の保養じゃ)

 恋愛対象にしない、優しい職場のイケメン上司……最高である。

 三嶌とくだらない雑談をしていたら受付の電話が鳴った。

「はい、みしまデンタルクリニックです――笹岡様、はい、はい……はい」

 チラリと横にいる三嶌を見る。

 三嶌もカルテを見てはいるが桃瀬の方に神経が寄っているのがわかった。

「少々お待ちくださいね……――先生、笹岡様、腫れてきたのか痛みがあるみたいで薬だけ処方してほしいそうですけど……」

「アポ取って」

 三嶌はカルテから目は逸らさなかったが、ぴしゃりと言い放つ。

 桃瀬はキャンセルの出た十八時で百合に来院を伝えた。
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