痛くしないで!~先生と始める甘い治療は胸がドキドキしかしません!~
 十八時前に百合はまたビル前で立ち尽くしていた。

 突然の電話にも関わらず快く受け入れの返事をくれて嬉しいより申し訳なさが勝った。混んだ時間に迷惑な患者だな、自分のことをそう思いつつ病院の扉を開けたら待合に一人男性が座っているだけで静かなものである。

(あれ、今日空いてる?)

「村瀬様~お疲れさまでした。保険証先にお返ししますね~、お会計ですが……」

 相変わらず女子力高めのリア充そうな受付嬢が清算をしているのでこの患者がいなくなれば自分だけになるのかとなんとなく察知した百合。十八時が最終受付だから自分が最後の患者になるのだろうか……そんなことをフト考えていると名前を呼ばれた。


「笹岡様~お待たせしました。お痛みどうですか? お薬なくなっちゃいましたぁ?」

「急にお電話してすみませんでした。会社で一錠落としてしまって……明日休診だし残り一錠では心もとなくて。ご無理言ってすみません」

「いいえ~お電話くださってよかったです。ちょっとまた腫れてますもんね。すぐ入ってもらいますからお待ちくださいね」

(え?)

「え? なにか?」

 可愛い受付嬢はキョトンとしても可愛い。はて? そんな風に問われて百合の方が面食らった。

「えっと……お薬だけもらいにきたつもりでしたが……」

 診察する風に言われて百合は戸惑う。電話でも薬の処方を頼んだだけだ。けれど病院側はそんなつもりはなかったかのようににこやかに受け入れてくれている。

「先生がお待ちですよ?」

 にこり、微笑む笑顔も抜群に可愛い。その笑顔に見惚れて「ん?」と、思う。

(え?)
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