痛くしないで!~先生と始める甘い治療は胸がドキドキしかしません!~
 桃瀬の放った言葉がすんなり聞き取れなかった。なんなら可愛い笑顔に見惚れて聞き逃してしまった。

 今、桃瀬は何と言っただろう。

「えっと……」

 言葉に詰まり固まる百合だったがそこでハッとした。

「――!?」

「桃瀬くん、ごめん。このデンタル忘れてた。カルテに入れといて……」

 百合の胸は瞬時に跳ねて止まりかける。目の前に現れて、その甘い声を耳にして息をするのも忘れそうなほどである。

 なんなら今、息をしていないかもしれない。

 マスクを首にかけて髪をかきあげながら受付に顔を出した三嶌。初めて見るその三嶌の素顔に百合は絶句する。

(うそでしょ)

 これは現実か?

 いや夢だろう、むしろ夢であってほしい。これがリアルならとても素直に受け入れられそうにないからだ。

(んな……も、もはや二次元レベルのイケメン!! こんなAIが作ったみたいな人間が三次元世界に存在するの!?)

 いつも目元のみ、素顔を晒したことのない三嶌だった。

 目元だけでも十分色気もありカッコよかった。むしろマスク顔がカッコよかった。マスクをしている顔で十分カッコよかった。何度も言うが三嶌は素顔を晒さなくてもカッコよかったのだ。

(素顔カッコいいとか、だめぇー!)

 百合の二次元スイッチが押される……どころかむしろ爆破して壊れる。

「ああ、こんばんは……また腫れちゃってるね。可哀想に、もっとはやく来てくれたらいいのに」

 そんなセリフに、にニコッと微笑まれて百合は即死しそうだった。
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