痛くしないで!~先生と始める甘い治療は胸がドキドキしかしません!~
浸麻(しんま)だして」

 カチャカチャと頭の上で金属音がする。

 百合は自分でも驚くほど落ち着いていた。椅子に寝転ぶ体勢になり、白い天井を見つめながら思っている。

(先生になら何をされたっていい……)

 だいぶ誤解を招く言い方だが、今から始まるのは右下親知らずの抜歯である。


「落ち着いてきていたのに……またえらく腫れちゃったね。ストレスかな」

「あ、そんな……気はしています。ちょっと仕事で……」

「薬は全部飲み切った?」

「いえ、結局一錠だけで……今日飲もうと思ったら落としてしまって残り一錠だけあります」

「そう……今日ここを抜いたら多少腫れると思うんだけど、数日でちゃんと引くから少しだけ我慢してね。それが治まればこの腫れももう起きないはずだし」

「……はい」

「……怖い?」

 三嶌の目が優しくそう問うてくる。

 怖さがないは嘘になる、でもここに来る前に感じていたような嫌悪感や恐怖心は今はない。

「平気……です」

「大丈夫、痛くないように優しくするね」

「……っ!」

(あぁぁぁーダメぇ。もう頭の中が沸騰しそうぅ……)

 百合は身悶えるような思いになる。そしてまた邪な妄想を始めてしまった。
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