痛くしないで!~先生と始める甘い治療は胸がドキドキしかしません!~
 三嶌はズイッと体を近づけてくる。

 口の中の感覚を奪われている百合はろくに話すこともできない。何か変なことを口走ったら舌でも噛みそうである。

 ただ、三嶌の発する言葉に息を飲んでいる。

 なにか言いたい気持ちはあるが、何と言えずにいるのは何と言えばいいか分からないだけだ。

 それくらい事態が飲み込めないのだ。

「せ、んせ? いま……わたしは……」

「ん? キス?」

(キ――っ!)

 三嶌の口からこぼれた単語に百合の頬は一瞬で燃えた。

「キス、初めてだった?」

 問われて百合は素直にコクリと頷いた。その素直な動作に三嶌は満足げに微笑み「良かった」と呟く。

「麻酔が切れるのに最低でも二時間くらいかなぁ。感覚が鈍くなってるから変なとこ噛んだりしないようにね?」

「は、はい……」

「今度は麻酔なんかより腫れるほどキスしてあげるね」

(……え)

 サラッと言われ過ぎてやはり聞き逃しかける百合がいる。それよりもだ。

「大丈夫、もう痛いことなんかない」

 砂糖菓子のような甘すぎる笑顔でそのセリフを吐かれて、百合の心は弾丸を打たれたような衝撃が走った。

「出会った時から決めてた。今日から君はもう僕のものだ」

 三嶌が告げた衝撃な言葉に開いた口が塞がらないほど驚く百合。

 麻痺した口元から涎が零れ落ちたことにも全く気づけないほど百合はただただ驚いていた。
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