痛くしないで!~先生と始める甘い治療は胸がドキドキしかしません!~
 受付に置かれている卓上カレンダーを見ながら曜日を確認していると三嶌が声をかけてきた。

「今日抜いて明日ひどく腫れてても困るしね。様子も見たいしいいからおいで?」

 ニコッと微笑まれて百合の体は固まる。

「えっと……」

 とまどいと軽くパニック状態の百合を見かねて桃瀬が咄嗟にアシストする。

「お仕事のあとだと十七時半くらいがベストですかね? もし痛みや腫れがひどいならいつでもお電話下されば先生はいてくださるはずなんで大丈夫ですよ、ね?」

 そう百合にではなく三嶌に確認を取る桃瀬に、百合はますますパニックを起こす。

「え! そんな私の都合で……」

「それでいいよ。なんかあったら電話して?」

 おそろしい程にスタッフとの連携が取れていて、百合が口を挟む隙もない。

「それじゃあ、明日。待ってるね」

 三嶌はそう言って院長室に消えてしまった。

 呆然とその姿を見送る百合を見つめる視線にフト気づく。桃瀬が神妙な顔で百合を見つめながら言った。

「笹岡様。もう無理です」

「は?」

 可愛い受付嬢が大げさにため息を吐いて首を大層にぶんぶん左右に振ってそう呟いた。

「先生がなんて言ったのかはわかりませんが、もう諦めてください。もう無理です」

 同じ言葉を繰り返されたことで百合もごくりと喉を鳴らす。もう無理とは? その真意は知りたい様で少し知るのが怖いのだが。

「諦めて先生の愛を受け止めてくださいね」

「あ、愛……」
 
 あまり聞きなれない言葉に百合はカッと頬を赤く染める。その露骨に真っ赤になる百合に桃瀬はにやぁ〜と楽し気な笑顔を浮かべるとズバッと言った。

「ちょっと……いやかなり粘着質なヤンデレタイプですけど」

「……」

「先生の愛、受け止めてあげてください♡」

 ニコッと笑われて告げられた言葉に百合の体は固まったのだった。


Fin~
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