痛くしないで!~先生と始める甘い治療は胸がドキドキしかしません!~
 そんな風にすっかりこじらせてしまった三嶌はしばらく恋をしていなかった。

 なんだか虚しくなっていた。自分の思いが報われないのは誰でも切ないものである。どこか雲をつかむような気持ち……目の前にあっても儚く消えて手にできない霧の様な感覚。なにも……残らない。

 人の気持ちが分からない。

 自分を好きと、熱烈に見つめてくる瞳は見つめ返すほど恐怖に揺れるように怯えられて避けられるのだから。


「俺たちは、どうやっても医者っていうカテゴリーから抜けられませんからねぇ~」

 後輩の旭は、そんなセリフをよく言っていた。

「肩書って大事ですけどね~。しかも先生はイメージがすごいから余計にダメですよ」

「イメージがすごい? それどういう意味?」

「優しそうなんっすよね」

「いいイメージじゃないの、それ」

 優しそうがダメとは。三嶌は目から鱗状態である。素直に聞き返してくる三嶌に旭はプッと吹き出した。

「優しいドクター……まぁ無駄に信用度が高くて安心しちゃいますよね。警察官が犯罪しないだろう、と同じ感じですよ」

「……例えがよくわからないんだけど」

「先生は医者が与える絶対的信用度を失ってるんですよ。彼女たちから」

(え?)
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