痛くしないで!~先生と始める甘い治療は胸がドキドキしかしません!~
 自分の体や心の不調、それを受け止め癒して治癒してくれる存在……医者。

 神様ではない、でも神様の様な存在である。
 自分たちの眠る時間や食事の時間を割いてまで、患者と向き合っている医師たちに尊敬し頭が下がる思いをする人間は多い。そんな医師が自分に向き合って寄り添ってくれると安心できる。

『先生を信頼してついていこう』

 患者は自然とそんな思いを芽生えさせていく。
 
『この先生になら……自身を預けられる』

 そう思う相手は……恋人になったらなにひとつ自分を信じてはくれないのか。

「束縛ってしんどいっすよ。信用されてないって証拠でしょ」

「……信用してるよ?」

「なにをですか?」

「……なにを?」

「医者はぁ、ここにいてくれるって患者が思うから成り立ってると思いません?」

「……そうだね」

 何かあった時……この先生がここにいてくれる……その頼る気持ち。かかりつけ医を見つけた時の安心感。患者は医師とその信頼感を得たいと思う。それはもちろん医師だって。

「なのに先生、逃げられてんっすよ? 怖いって。ね? 勝手に……って言い方は乱暴ですけど、医者で優しい先生のイメージが恋人になると一気に崩れちゃうんでしょうね。思ってたのと違う! の、典型的パターンですよ」

(……思ってたのと、ちがう?)

「人は理想と現実を混同しがちだし、勝手に思い込むところもありますから。ハイスペイケメンドクターと付き合って舞い上がってるところに蓋開けたら変態で性癖狂ってるって怖いし嫌でしょ」

「ねぇ、今変態って言った?」

「え、そんなこと言いました?」

 突っ込まれてサラッとスルーした旭は真面目な顔をして三嶌に言った。
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