痛くしないで!~先生と始める甘い治療は胸がドキドキしかしません!~
「なんですか? あの僕は待ちますって」

 香苗に問われて、親知らずを抜く話だと言ったら怒られた。遊びすぎだと指摘を受けてそれは否定できない、と思わず吹き出してしまった。けれど彼女の魅力と惹かれている意思を伝えたら香苗はしっかりとその意味を察知した。

 そして優秀なアシスタントたちは仕事以外でもサポートに回りだす。

「先生、今日検診の川澄様、笹岡様と同じ職場みたいですよ」

「へぇ、そうなの。川澄さんの紹介ってこと?」

「ですかね。笹岡様、問診表に書いといてくれなかったなぁ。川澄さんにリサーチですね! 先生!」

 三カ月検診にやってきた川澄冴子は特に問題もなく歯石除去とPMTCのクリーニングだけ行った。

「次は半年後くらいの定期検診にしましょうか。なにか質問とか聞いておきたいこととかなかったですか?」

「あ、診療というか、そもそも私のことではないんですけど……いいですか?」

「はい」

「先日笹岡百合さん受診されましたよね? 彼女……大丈夫でしたか?」

 患者のプライベートは当然守秘義務の世界である。リサーチしろなど言われたところで医師が個人的に他の患者の話題を振れるわけもない。けれど運よく話題は患者の方から振ってきてくれた。
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