痛くしないで!~先生と始める甘い治療は胸がドキドキしかしません!~
 腫れあがった頬と疲れた表情で来院した百合を目にしたときは単純に可哀想で。

 すぐにでも楽にしてやりたい、三嶌はそう思った。

「あのぉ! 私、お薬もらいに来ただけなので、その……」

 困ったように涙目になって逃げ腰になった百合を見たときに本音は、腕を掴んで院長室に閉じ込めてそのまま襲い掛かろうかと思ったがなんとか言葉で繋ぎとめた。

「帰さない」

 そう言っただけで百合が腰を抜かしてしまい、それには三嶌も予想外で驚いた。
 しかも自分に殺されると叫ぶ。我慢できなくて声を上げて笑ってしまうと、桃瀬も百合も目を丸くして見つめてきた。

 自分でも驚いたのだ。こんな風に人前で声をあげて笑ったことなどないのだから。

「まだ死にたくないとかじゃなくてここで死にたくないというか、いやでももうこんな非現実な世界で死ねるのはむしろ幸せなのかもしれないんですけど、でも……先生に人殺しの罪はきせたくないし、先生がそれでもし逮捕されたりしたらどうしようって……」
 
 百合の心の声が駄々洩れで聞いてるだけで三嶌も心の中で笑いが止まらず興奮だけが増してくる。

(ここで死にたくないなら俺の腕の中で死ねばいいじゃないか、喜んで受け入れてあげよう。逮捕されるようなことがあってもその前に自分も後を追えば済むだけの話だ。彼女が心配することはなにもなくなる、問題ない)

 三嶌も死ぬことに躊躇はなさそうだった。
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