痛くしないで!~先生と始める甘い治療は胸がドキドキしかしません!~
 体を起こし、口をゆすがせると麻酔のせいで含みすぎたのか口元を濡らしていた。

 タオルで拭いてやるとまっすぐに見つめてくる。

 百合はいつでもまっすぐに見つめてくる、それもためらいもなく射るようにだ。
 慣れていないくせに貪欲な態度が三嶌を煽るには十分だった。
 
 三嶌は半開きになる無防備な百合の唇に触れた。その時でさえ百合は目を逸らさない。

 三嶌は見つめ合ってするキスが好きだった。だから自分が瞳を閉じることなど絶対にしない。それは相手の表情を絶対に見逃したくないからだ。
 
 百合はただ驚いて目を閉じることさえできなかっただけかもしれない、それでも三嶌的には理想的過ぎる相手だった。

 見つめ合ってキスができる、それは三嶌の求めるキスのスタイルだったから。

「逃がさないよ? 言ったよね? 僕が全部受け止めてあげるって」

 犯罪者になる覚悟も決めた。
 捕まるギリギリまで百合を自分色に染めて追い込んで離さない気でいる、それはまだ言わない方がいいな、三嶌はそう思う。

「出会った時から決めてた。今日から君はもう僕のものだ」

 そう言ったら百合は口から涎をこぼしていた。

(ここで涎までこぼすとか……あざとすぎる)

 ただの麻酔のしびれと衝撃なだけなのに、三嶌はもう完全に百合の行動に落ちてしまっていた。
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