痛くしないで!~先生と始める甘い治療は胸がドキドキしかしません!~
 (あれ! いつのまに! 瞬間移動!?)

 なわけない。
 引っ張られはしたものの自分の足で歩きここまで来て座ったものの三嶌に見惚れて無意識だった、パターンなだけである。
 
「先に消毒してしまおうね」

 にこっと笑われてまた百合の胸はときめく。
 ずっとドキドキしている、今後の人生でドキドキする時間を今莫大に使ってしまっている! 百合はそう思った。

(絶対寿命縮んでる……)

「ん、あーん」

「……あー……」

「……」

 百合の声も一緒に漏れた。
 それに三嶌が反応しないわけがないのだが、そんなことを露程しらぬ百合は無防備に口を開けている。

 腫れた部分に冷たい液体がかかって一瞬ヒヤッと感じたもののすぐに口の中に馴染む。バキュームが消毒液と唾液を吸い上げてくれるので苦しみも何もない。

「はい、おしまい。傷口もきれいだね。腫れもすぐに治ると思うよ、よく頑張ったね」

 椅子が徐々に起き上がって三嶌と距離が近づいていく。

「偉かったね」

 そう言って頭を撫でられたのである。
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