隠れ美少女とクール系男子
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 旧校舎に着き、最初に見たのは女だった。おそらくオレ目当てで旧校舎まで先回りをしたのだろう。

 俺は後ろから近づき声をかけた。



「何やってんだ、お前」

「きゃあ! びっくりした」



 そう言い、女は後ろにいる俺の方へくるりと振り向く。

 腰まで届く長い黒髪に顔を大きく隠すようにつけている分厚いメガネをした地味な女だった。見た目はおとなしそうだが、そういう人ほど裏の顔があるのを俺は知っている。

 先ほどびっくりしていたが、あれも演技なのだろう。俺に警戒されないように計算をしている。俺が知っている女はみんなそんな奴ばっかりだった。

 ──いや、昔、一人だけ分け隔てなく接してくれた女の子がいたな。今はどこにいるのかも分からないが。

 女はまるで俺と目を合わせたくないというふうに視線を下げ質問をしてきた。


「えっと……職員室探してて」

「はぁ? こんなとこに職員室なんかあるわけないだろ。ここ旧校舎だぞ」
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