どうも、魔導師様に拾われた幼女です！

試しにそう言ってみると、ノアが少し悩むように尻尾を動かす。
そして
『ご主人が言うなら…』
プライドが高く、命令(おねがい)は絶対に聞かないとされる神獣が、受け入れてくれた。
「ありがとうノア！」
思わず抱きつくと、ノアは嬉しそうに尻尾を振った後、ゆらりと魔力を揺らした。
その瞬間、一瞬だけリヴェル様にもノアが見えるようになったみたい。
驚いたように目を見開いている。
「リヴェル様、ノアと魔力共有してくれませんか…？」
ちなみに魔力共有とは、言葉通りお互いの魔力を共有すること。
相手になにかあった時に、魔力をたどって居場所が分かったりするので、高位貴族や王族は家族で魔力共有をしているんだとか。
ちなみに、神獣と魔力共有をすると、姿が見えるようになる。
そうすれば一緒に暮らしても不便は減るはず…！
「そうですね…ではひとつ、条件を出しましょう。喋り方を変えてください」
「…喋り方？」
「えぇ。です、ます、が丁寧語でしょう？メリーは今その喋り方です。なので…家族みたいに喋ってくれませんか？」
「家族…」
「娘が父に丁寧語で喋りますか？」
私は、父に対しても丁寧語だった。
でもリヴェル様がそう訊いてくるってことは、私が特殊なだけなのかな？
そう思って小さく頷くと、リヴェル様が満足げに魔力を出した。
それに合わせてノアも魔力を出し、少しだけその場が銀色に光る。
「…よし、終わったぞご主人」
「ありがとう！…ってノア、普通に話せるの⁉」
ずっと頭の中に直接話しかけてくる『念話(テレパシー)』だったから、普通に話せるとは思っていなかった。
「ノア様」
「ノアでいい。気高き魔導師のお前が様付けなど気色の悪い」
「ノア、そんなこと言わないの」
これからお世話になるんだから、と注意すると、ノアは不貞腐れたようによく磨かれた床に寝そべった。
「もう、ノア…」
「いいですよ、メリー。魔導師にとって神獣は絶対君主なので、神獣が言うなら従うのみです。私のことはリヴェルとお呼びくださいね、ノア」
さっきの言われようを全く気にする様子もないリヴェル様がにこやかに言う。
「…あれ？リヴェル様も丁寧語じゃ」
「気にしないでくださいメリー」
そこは気にしないほうがいいことらしい。
「それでは屋敷の者を紹介しましょう」
「お屋敷の…人？」
「えぇ。まぁ、メリーの世話は私がしますので」
まさかの魔導師様直々にお世話をしてもらえるらしい。