婚約者が妹と結婚したいと言ってきたので、私は身を引こうと決めました
「アーリン。ちょうど君と会いたいと思っていたところだ。」

その言葉に、胸がざわつく。なぜ今さら?

「それは……私に、まだ未練が残っているから?」

自分でも驚くほど、冷静な声だった。

けれど、心は穏やかではなかった。

私はグレイブの横で、国王の目を真正面から見つめた。


「いや、ベンジャミン王との交渉の件だよ。」

クリフの声には、かつて私が何度も聞いた、国王としての確かな音色が宿っていた。私情を挟まぬ、鋼のような響き――。

その瞬間、胸に安堵が広がると同時に、全身を緊張が走った。

「食料の調達を終えたら、この国をやるとでも言ったか。」

彼のまなざしが鋭く私を射抜く。まるで、ベンジャミン王との間に密約でも交わしたのではないかと、疑っているかのように。

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