婚約者が妹と結婚したいと言ってきたので、私は身を引こうと決めました
――責められても、おかしくはない。

私は視線をそらさず、ただ静かに息をのんだ。心の奥が、じんと痛む。

「いえ。決してそんな事は約束しておりません。」

私ははっきりと否定した。胸が苦しくなるほど、心の奥から絞り出した言葉だった。

だが、クリフはしばし沈黙し、ぽつりと言った。


「裏切ったか……」

その呟きに、血の気が引いた。――まさか、ベンジャミン王が?

「そんな……ベンジャミン王に限って、裏切るなんて!」

私の声は震えていた。

あの人は、飢えた民を救ってくれた。

誠実で、優しい眼差しをしていたはずなのに。

けれど、クリフは落ち着き払った声で言った。


「元々、隣国とはあまり交流がなかった。…アーリンの件で私が腑抜けになったとでも思い、隙をついたのだろう。」









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