婚約者が妹と結婚したいと言ってきたので、私は身を引こうと決めました
「では、出発!」

号令がかかり、兵士たちが一歩一歩と足を進めていく。

その中に、誇らしげな鎧を身にまとったグレイブの姿があった。

「グレイブ!」

思わず声を上げると、彼は振り向いて、私にだけわかるような優しい笑顔で、手を高く掲げてくれた。

それだけで、胸がいっぱいになった。

どうか――どうか、無事で。

私は祈りながら、彼の背中を見送った。


その時だった。

進軍の中で、なぜかグレイブがくるりと馬を回し、私のもとへ駆けてきた。

驚く私の前で、彼は馬から軽やかに降りると、まっすぐに私の手を取った。

「どうしたの? グレイブ……」

鼓動が速くなる。

戦へ向かう前に、彼が何を伝えようとしているのか――怖くて、でも知りたくて。
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