婚約者が妹と結婚したいと言ってきたので、私は身を引こうと決めました
やがて、宮殿に二人の王が到着した。

「国王!」

無事に戻ったクリフの姿を見て、兵士たちも使用人たちも、誰もが感激に満ちた声をあげた。

彼の帰還は、まさに国の安堵そのものだった。

「ベンジャミン王……!」

年配の大臣がその姿を見て驚愕の声を上げる。

「まさか、若き隣国の王がこの宮殿にお越しくださるとは!」

「そんなに歓迎してくれるのか。来てよかったな。」

ベンジャミン王は穏やかな笑みを浮かべて答え、周囲の緊張を一気に解いた。

まるでその場の空気まで柔らかくなるような、優しい笑みだった。


その時だった――

「クリフ……」

一際震えた声が響いた。

セシリー王妃だ。

彼女は人目も憚らず、涙を溜めた目でクリフに駆け寄ってきた。

かつての誤解、傷ついた心、すれ違い――それらすべてを流すような涙だった。
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