婚約者が妹と結婚したいと言ってきたので、私は身を引こうと決めました
私は放火の罪で、宮殿に連れて行かれた。

「私はやっていません!本当に……私じゃないんです……」

声が震える。けれど、私の訴えは冷たい宮殿の壁に吸い込まれていくだけだった。


久しぶりに目にしたクリフは、以前よりもずっと威厳に満ちていた。

国王としての風格が、私に距離を感じさせる。

「では、他に誰が火をつけた?」

淡々とした声が心をえぐる。優しかったかつての面影は、どこにもなかった。


「……」

言えない。ミーシャの名を口に出せば、私の言葉は嫉妬にまみれた濡れ衣だと受け取られるだろう。

火傷を負った彼女を、誰も疑おうとはしない。

むしろ、被害者として同情すら集めている。


「証拠もないまま他人を貶めるつもりか?」

クリフの目が細められる。追い詰めるようなその視線に、私は立っているのがやっとだった。

誰も私を信じてくれない。

火事という大罪の前に、私はただの容疑者にされた。

――でも私は、やっていない。

それだけは、どんなに疑われようとも、決して曲げられない真実だった。
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