婚約者が妹と結婚したいと言ってきたので、私は身を引こうと決めました
宮殿の門をくぐった瞬間、かつての日々が胸をよぎった。けれど感傷に浸っている暇などない。

私は足早に廊下を進む。

すると、前方から豪奢なドレスをまとい、絢爛な笑みを浮かべたセシリーが現れた。


「まあ、アーリン。珍しいわね。」

かつては「お姉様」と呼んでいた面影も、今はもうない。

「セシリー、クリフを呼んでちょうだい。」私は淡々と告げる。

ふと目に入ったのは、セシリーの首元や手元に光る、

いくつもの宝石。ルビー、サファイア、エメラルド……まるで宝石箱をひっくり返したよう。


「その宝石……どこで手に入れたの?」

「綺麗でしょう? 最近手に入れたの。今の私に似合うと思わない?」

自慢げに笑うその顔が、あまりに無神経で、胸が詰まった。

「信じられない……町では餓死者が出ているのよ?」

私の声は怒りで震えていた。

人が飢えて苦しんでいる中で、王妃が宝石を誇る国なんて──

どこで道を違えたの?
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