婚約者が妹と結婚したいと言ってきたので、私は身を引こうと決めました
「セシリー、もっと国民を見なさい。」

私の声に、セシリーの眉がピクリと動く。かつてあんなにも純粋だった妹が、まるで別人のように冷たくなっていた。

「一人だけ贅沢をしている王妃など、ただのお飾りじゃないの。」

そう言った瞬間、彼女はふいと私から視線を逸らし、侮蔑するように唇を歪めた。

「黙ってて。ああ、みすぼらしい。私、そういう人大嫌いなの。」

怒りで拳が震えるのを感じる。思わず言葉が口をついた。

「セシリー、姉として……」

「私は王妃よ!」彼女の声が鋭く響き渡る。視線には威厳と傲慢が宿り、もはや姉妹としての情は見えなかった。

「誰の指図も受けないわ!」

その言葉が胸を切り裂く。間違っている、

そう思っても、彼女は今や王妃――正しさより、立場が力を持つ世界。

私はただ、唇を噛みしめるしかなかった。
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