婚約者が妹と結婚したいと言ってきたので、私は身を引こうと決めました
私は、ベンジャミン王子からの手紙を胸に抱き、王宮へと足を運んだ。

これを国の許可なく実行すれば、隣国との関係に軋轢が生じる。

だからこそ、正式に認めさせなければならない。


謁見の間に通されると、玉座の上の男――クリフは私を見るなり、口元に薄く笑みを浮かべた。

「なんだアーリン。やっと愛人になる気になったか?」

心底呆れた。国中に餓死者が出ているというのに、なんて呑気な……。

「国王。私は愛人になるためにここに来たのではありません。」

「では、何のために?」

その問いに、私は一歩前に出る。

「国王は、この国が緊急事態にあるとご存じですか?」

しばしの沈黙の後、クリフは視線を逸らすように小さく呟いた。

「ああ……知っている」

その声には責任も、危機感も、まるで感じられなかった。

私は奥歯を噛みしめ、王としての覚悟を問いたくなった。

今、目の前の命を救わずして、何が王なのか。








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