婚約者が妹と結婚したいと言ってきたので、私は身を引こうと決めました
私は静かに背を向け、玉座の間をあとにしようと歩き出した。その時だった。

「……アーリンは、立派だな。」

低く呟かれたその声に、私は足を止める。

振り返ると、クリフは玉座に座ったまま、俯いていた。

背筋を伸ばすこともなく、王としての威厳も見えない。

まるで一人の迷える男がそこに座っているかのようだった。


「皇太子妃になるという立場を奪われたのに、聖女として国を救い、今ではこの危機的状況にある国民までも助けようとしている。」

静かに語るその言葉に、かつてのクリフの面影を少しだけ感じた。

けれど、それが何になるのだろう。私は小さくため息をついた。

「……本来なら、それはあなたがなさることだったはずです。」

決して責めるような口調ではなかった。

ただ、事実を静かに告げただけ。

でも、その一言にクリフの肩がわずかに震えたのが分かった。

「分かってる……分かってるんだ……」

彼は苦しげに笑い、顔を上げた。

だが、その瞳はどこか虚ろで、自分の無力さを隠せていなかった。

「私は……どこで、何を間違えたんだろうな。」

その声に、私は言葉を失った。
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