【シナリオ】恋も未来も、今はまだ練習中。
第2話 サークル
⚪︎通学途中/朝
通学通勤の人で賑わってる駅構内。汐梨は駅構内の【乗車位置②】と書かれた小さな看板がある場所に並ぶ。汐梨の前には二人並んでいる。
汐梨はリュックを背負い電車を待っている。
アナウンス《――まもなく三番線に〇〇行きが到着いたします。白線の内側でお待ちください》
汐梨「今日も人いっぱいだなぁ」
電車が到着して扉が開く。汐梨は乗り込もうと歩き出す、その時腕を掴まれる。
汐梨(へ?)掴まれた腕の方向に目線を向ける。
美哉「汐梨ちゃん、昨日ぶりだねー」
汐梨「柴崎先輩……!?」
美哉「うん、そうだよ。同じ電車なんだね」
美哉と一緒に汐梨は電車に乗ると隅っこに連れて行かれて壁側に汐梨を誘導し、それを守るように美哉は汐梨を覆う。
美哉「大丈夫?」「辛くない?」
汐梨(辛いのはその姿勢の、柴崎先輩なんじゃ……?)頷く
その態勢のまま、4駅。電車から降りる。降りて汐梨と美哉は改札方面へ歩く。
汐梨「柴崎先輩、ありがとうございました」
美哉「いや、別に。満員電車だし、潰れると大変だからね」「汐梨ちゃん朝早いんだね」
汐梨「今日は追試受験願と受験料を払いに総務課に行こうと思いまして」「柴崎先輩も早いですね」
美哉「俺も受験料払いに行こうと思って」
美哉の雑談を聞きながら大学まで歩く。汐梨は話題の尽きない美哉の話を聞きながら歩く。
大学の門を通り、総務課がある建物へ入る。
⚪︎大学の建物内にある職員室・総務課/朝
美哉が「すみません〜」と声を掛ける。
職員「柴崎、すみませんじゃないだろ」
美哉「じゃあ、おはようございます?」
職員「はぁ……まったく」「何の用だ?」呆れ顔をする
美哉「追試受験願を出しに来ました。この子も一緒に」
美哉は汐梨を指差す。
職員「じゃ、学生証出してくれる? それと受験願と受験料も」
汐梨は学生証と受験願とお金を取り出して提出する。
職員「……うん、確かに。梶塚さん、これは声楽と器楽の課題曲の楽譜です。試験の日にちと時間書いてあるので遅れないように気をつけて」「頑張ってね」
汐梨は紙を受け取ると、頭を下げる。
汐梨「ありがとうございます」
汐梨は楽譜を入れたファイルを鞄に入れる。職員と美哉が話しているのを見て汐梨は「お先に失礼します」と美哉の後ろ姿に向けて言う。
汐梨は総務課の建物から出る。
⚪︎大学内移動/朝
職員室から出て講義室へ歩いて向かう。
汐梨(講義までまだ時間あるし、カフェテリアに行ってお茶にしようかな)心の中で言っているつもりだが、ブツブツ呟いている。
美哉「汐梨ちゃん」
汐梨「……(ブツブツ)」
美哉「汐梨ちゃん〜!」こちらに気づかない汐梨に美哉は汐梨の前に移動する。汐梨の視界に入る。
汐梨「わっ……!」聞こえていなかったため、いきなり出てきた美哉に驚く。
美哉「そんな驚かないでよ、そんなに難しい曲だったの?」
汐梨は「すみません」と言いながらペコリと頭を下げる。
汐梨「違います。いや違うくないですけど、講義まで時間があるので今からどこで過ごそうかなと思いまして」
美哉「そっか、じゃあ今暇なんだ」汐梨を見ながらニヤッと笑う。
汐梨「な……なんですか」
美哉「昨日のこと、考えてくれた? サークルのこと!」
汐梨「あ……あはははは」棒読みで美哉から目を逸らしながら昨日のことを思い出す。
○講義E棟保育室Ⅲから子ども発達実習棟2階・保育実習室/回想
汐梨は美哉に手を引かれて連れて行かれたのは講義E棟の建物から子ども発達実習棟へ連れて行かれる。美哉は2階にある保育実習室のドアを思いっきり開ける。
美哉「失礼しまーす」
実習室の中には5人ほどいる。
榛名「あ、美哉くん。おかえり」
美哉「うん、ただいま〜」
榛名「美哉くん、後ろの子は誰? 見ない顔だ」
美哉「保育科の1年生の汐梨ちゃんだよ。ピアノと声楽が追試になったんだって、だから連れてきた」美哉は榛名と話しながら汐梨を見る。そして汐梨に「そんなとこいないでこっちおいでよ」と手招き。
汐梨は美哉と榛名のところに行く。
榛名「初めまして、俺は榛名っていいます。美哉の一つ上の四年でここのサークルの部長です。あ、美哉くんが副部長ね」
汐梨「挨拶が遅れてすみません! 初めまして、梶塚汐梨です」ペコリと頭を下げる。
榛名「梶塚さんね、よろしくね」
汐梨「あの、ここは何のサークルなんでしょうか……私、柴崎先輩に何の説明もされなくて」
榛名「え、そうなの? 美哉くんはよくあるんだよね。えっと、ここはオペレッタ研究部で」
汐梨(オペレッタ?)(聞いたことあるけど……なんだっけ)
榛名「あ、オペレッタ知ってる? チラシがあったはずなんだけど」
榛名は大きなファイルを探し始める。榛名は奥にいる学生に「ファイル、そっちにない?」と聞いていて一人女性が持ってくる。
学生女「部長、ちゃんとしてください。一応、大事なファイルなんですから」
榛名「ごめんごめん、一応じゃないけど」女性と話を切り上げる。
汐梨(仲がいいんだなぁ)
榛名「梶塚さん、お待たせ。オペレッタというのは、音楽劇の一つでイタリア語で小さなオペラと言われてる。簡単に言うと、お遊戯会の劇。お話に合わせて踊ったり歌ったりするんだ」
汐梨「そうなんですね」
榛名「うん。単位にも入ってるからいずれ習うことなんだけど、まぁここはオペレッタ自体は一年の中で2回、保育園にボランティアで発表させてもらうくらいだよ」
汐梨「じゃあ、他は何をしているんですか?」
榛名「オペレッタ硏究部には別名があってね、『次こそ単位を落とさずがんばろう会』!」
汐梨「・・・え?」
榛名「そんな反応になるよね。ここは基本的に紹介制なんだ。追試の説明会の時に誘うんだ。俺も美哉も卒業した先輩たちに誘われてきたんだよね。ここは単位取得のために教えあったり、するんだよ」
汐梨「そうなんですか……」
榛名「そんなんだから、入るも入らないも梶塚さん次第だから気楽に考えなよ」
《回想終》
美哉「もしかして、もうサークルどこか入ってたりしてた!?」
汐梨「いや、何も入ってなくて。大学のサークル入るのは憧れていたし入ってみたいなって思ってたんですけど、生活に馴染めてからと思ってました。だけど、どこも人間関係というかそういうのが出来ていて」(サークルに入りたくないわけじゃない、ただこの時期からはどこも仲良しが出来てしまっていて入れる雰囲気じゃなかった。友達も菜奈ちゃんしかいないし、菜奈ちゃんは高校時代からやっていたテニス部に入っちゃったし……)
美哉「まぁ、そうだね。入学してすぐに入部すれば、新入生歓迎会という名の飲み会に参加して仲を深めるって感じだから途中からは大変だからな」
汐梨「はい、そうなんです。だから、少し悩みます」シュンとする
美哉「何か懸念することがあった? 嫌だなって思ったこととか」
汐梨「いや、そうじゃなくて。魅力的なんですけど、私が入ってもいいのかなって……」「成績も良くないですし」
美哉「成績なんて俺も悪いよ。追試の説明会いたくらいなんだよ。だけど、副部長」偉そうに胸を張る
汐梨(なんか偉そう……でも、誘ってくれたのは嬉しかった。一年生はいたのかわからないけど女の子いたし、もしかしたら菜奈ちゃん意外に友達が出来るかもしれない。でも……)
美哉「あ、そうだ。今日は夕方暇?」
汐梨(夕方?)「え、はい」
美哉「今日、夕方に親睦会があるんだよ。パンケーキを食べに行くんだけど甘いもの好きなら、どうかな。中の雰囲気も分かるかもだよ」
汐梨「パンケーキ……」
美哉はスマホを取り出してスマホの画面を汐梨に見せる。そこにはふわふわそうなスフレパンケーキにたっぷりの生クリームにフルーツがゴロゴロトッピングされている写真が載っているホームページ。
美哉「どう? パンケーキ食べに来ない?」
汐梨(食べるの大好きな私にはとても魅力的……)(うぅ!)
美哉は葛藤する汐梨を見て「今回はご馳走するよ」と最後の一撃をする。
汐梨「い、行きます……」(負けた)