【シナリオ】恋も未来も、今はまだ練習中。
第9話 恋の幕が上がるとき
○オペレッタサークル部室/夕方
部室の空気はいつもより少しピリピリしていた。
稽古初日が近づき、みんなの表情に気合いがみなぎっている。
榛名「よし、今日は主役の汐梨を中心に、台詞と発声の練習を始めよう!」
汐梨は緊張しながらも、気持ちを引き締めて立つ。
美哉「俺もピアノの練習、頑張るからな!」
美哉が軽く拳を握りしめるのを見て、汐梨も小さく頷く。
○舞台リハーサルスタジオ/夜
舞台のセットが少しずつ出来上がり、照明が落とされたスタジオは幻想的な空気に包まれている。
汐梨は台詞を何度も繰り返し練習しながらも、ふと視線を上げると、美哉がピアノを弾いている姿が目に入った。
美哉の指先は迷いなく鍵盤を滑り、優しいメロディが部屋中に響く。
汐梨(こんなに輝いて見える先輩、初めてかもしれない……)
○大学キャンパス・ベンチ/翌日昼休み
麗奈が一人でベンチに座っている。スマホを手に取り、汐梨の写真を眺めては、複雑な表情を浮かべている。
麗奈(あの子が“主役”だなんて……)
スマホの画面にはサークルのSNS写真。そこに写る汐梨は笑顔で輝いている。
麗奈「このままじゃ……私のポジションが危ういかもね」
○カフェテリア/昼休み
汐梨と美哉は並んでランチをしている。
美哉「台詞、順調?」
汐梨「うん。まだ噛みそうになるけど、少しずつ慣れてきたよ」
美哉「俺もピアノ、毎日練習してる。汐梨ちゃんに迷惑かけたくないから」
微笑み合う二人。
汐梨「ねぇ、美哉先輩。サークルに入ってよかったなって思う」
美哉「俺もだよ。汐梨ちゃんが頑張ってるの、すごくいい刺激になる」
その時、麗奈が少し離れた席から二人を見ているのに気づく。
汐梨(あの先輩……何か考えてるみたい)
○サークル部室・夜
稽古後の片付けをしていると、美哉がぽつりと言う。
美哉「麗奈先輩、なんだか最近冷たい気がするんだ」
汐梨「えっ? そんなことないよ」
美哉「いや、でも表情とか……」
汐梨は少しだけ不安になった。
汐梨(恋だけじゃなくて、サークルの人間関係もこれから大変になるのかな)
○大学キャンパス・夕暮れ
汐梨と美哉は校舎の影に隠れて話す。
美哉「これから、いろんな壁があるかもしれないけど……」
汐梨「うん」
美哉「俺たちなら、乗り越えられると思うんだ」
雨上がりの夕焼けが二人を温かく包む。
汐梨「ありがとう、先輩。私、もっと頑張るね」
美哉「俺もだ。汐梨ちゃん、ずっと一緒にいよう」