年下敏腕パイロットは想い焦がれた政略妻をこの手で愛して離さない
「ねえ、若林さん」
「はい?」

「あ、望海さんでいい?」

突然名前で呼ばれたことに驚き、私は一瞬言葉を詰まらせたが、すぐに「あ、うん」と小さく頷いた。
「俺は、このままこのお見合いを進めたいと思ってる。もちろん母のためというのは嘘じゃない。ずっと断っていた俺が初めて進めていいと伝えたから、喜んでる」

言葉遣いも今までよりラフな感じの彼にドキッとしつつ、今の言葉の意味を考えた。

「初めて……?」
詳しく聞いていいのかわからなかったが、つい尋ねてしまった。

「そう。望海さんは俺が御曹司だからとか、そういう条件だけで選ぶ人じゃないから。俺のことを一人の人間として、対等に接してくれた人だから」

「新人のとき、かなり厳しくしちゃったよね。ごめんね」
自分でも、仕事となれば一切妥協しない性分だということは理解している。御曹司だろうがなんだろうが、空の安全を守るために譲れないものはある。

「謝ることなんてない。それがうれしかった」
「でも、それだけでこの話を進めようって思ったの? もしかして、私のことも考えてくれた? 父があんなふうだから……」
私の問いかけに、鷹野君は少し考えた後、「ないとは言わない」と答えた。
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