年下敏腕パイロットは想い焦がれた政略妻をこの手で愛して離さない
彼は、自分が断れば私の立場がなくなることを懸念していたのだろう。

「なんだかんだ優しいね、鷹野君は。お母さまのこともそう」
結婚する気はなくても、何度も見合いをしていたのは、お母さまのためだったのだろう。そして、私と楽しそうに話すお義母さまを見て、最終的に決断したのかもしれない。

そのとき、車は大きな自動ゲートを通過した。ゲートの先には、都内とは思えないほどの緑が広がっている。

低層階のレジデンスのようで、車がゆっくりと敷地内に入ると、目の前の光景に思わず息を呑んだ。
高級感漂うマンションの周囲には、手入れの行き届いた木々が植えられ、まるで隠れ家のような静かな空間を作り出していた。

「本当に母さん、用意良すぎだろう……。いつから決めてたんだか」
鷹野君が苦笑混じりにそう呟く。その声には呆れが滲んでいたが、どこかうれしそうにも聞こえた。
マンションのエントランスに車を停めると、担当者らしいスーツ姿の男性がすでに待機しており、鷹野君が車を降りると同時に、深々と頭を下げて挨拶を始めた。

そのころには雨も上がり、青い空が広がっていた。
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