年下敏腕パイロットは想い焦がれた政略妻をこの手で愛して離さない
「そうなんだ。でも、とっても素敵で落ち着く空間だよね。結婚相手が誰かも分からない時期に決めた家でしょう? きっと、鷹野君のことを考えて選んだんだね」
お義母さまの、息子を大切に思う気持ちが詰まった家なのだと感じた。

パイロットという、常に気を張る仕事。それを少しでもリラックスできるように――そんな心遣いが、随所に見られる。
実家は近代的な建物だが、モノトーンで統一されていて、まるでモデルルームのように無機質だった。もちろん、インテリアコーディネートのプロが手がけたのだろう。けれど、どこか冷たさを感じてしまう。

それはきっと、私の心のせいなのかもしれないが――。
「少し、二人で見てもいいですか?」
鷹野君が担当の男性にそう声をかけると、「もちろんです」と言って、彼は一礼し、部屋を出て行った。
広い家に二人きりになると、なぜか少し緊張してしまう。そんな私をよそに、鷹野君はまったく態度を変えることなく口を開いた。

「望海さんは、ずっと実家?」
窓越しに景色を見つめながら問いかける彼の横顔は穏やかで、どこか遠くを見ているようだった。私も隣に立ち、視線を外へ向ける。
バルコニーの先には、手入れの行き届いた庭が広がり、低層階ならではの開放感がある。ウッドデッキ調の床材が敷かれ、リゾート地のような穏やかな雰囲気が漂っていた。
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