年下敏腕パイロットは想い焦がれた政略妻をこの手で愛して離さない
「そうだね」
ぽつりとそう答えた後、くるりと踵を返し、部屋へと戻る。

仕事はしていたが、父の条件として、結婚に必要なことは学ばなければならなかった。そのため、昔から家に来ていた家政婦の三谷さんに、家事を教わることになった。

毎日、父の小言や沙羅の嫌味を聞かされ、母も助けてくれることはなかった。そんな生活が楽しいはずもなく、私はただ耐えるしかなかった。
「出たくても出られなかったっていうこと?」
サービス業を長く続けていると、どんな状況でも冷静に振る舞い、表情を崩さない自信があった。けれど、あっさりと見破られた私は、思わず肩をすくめる。

「さすがに、人をよく見てるね」
「それは、望海さんだから……」
「え?」
なにを言おうとしたのか分からず、きょとんとして聞き返したが、鷹野君は答えることなく肩をすくめ、視線を上へと向けた。

「見に行こう」
「うん」

二階へ続く階段を上ると、踊り場から先ほどのリビングが見下ろせた。二階には寝室やゲストルームが並んでいるようだ。
最初の扉を開けると、まるで高級ホテルのような洗練された寝室が現れる。
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