年下敏腕パイロットは想い焦がれた政略妻をこの手で愛して離さない
引っ越しの前日。
空港の更衣室で私は、制服に袖を通し、気を引き締めるように軽く息を吐いた。
昨夜は荷造りを始める前に、父の雑用を手伝わされ、さらに沙羅には嫌がらせのように家のことを押し付けられた。そのせいで思うように進まず、結局、遅くまで荷造りをする羽目になった。おかげで寝不足の上、肩には疲れがずっしりとのしかかり、朝から気分は沈んでいた。

それでも、仕事が始まればそんなことを気にしている余裕はない。
響き渡るアナウンスと、行き交う人々のざわめきの中、同僚たちと軽く挨拶を交わしながらバックヤードを抜け、チェックインカウンターへ向かう。

少し落ち着いたころ、ふと視線を向けた先に、見慣れたシルエットがあった。

沙羅――。

高いピンヒールにタイトスカート、白いシャツに首からIDカード。隙のない洗練された装いは、ひときわ目を引いていた。
普段はめったにここへ来ることのない沙羅がなぜ空港内に?

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