年下敏腕パイロットは想い焦がれた政略妻をこの手で愛して離さない
半袖のシャツからのぞく腕は、無駄のないしなやかな筋肉に覆われ、力強さとしなやかさを兼ね備えていた。
すぐ目の前にあるその存在を意識してしまい、ほんの一瞬、息を飲む。
「あっ、うん。……ありがとう」
わずかに間を置いてそう告げると、奏多君はなにも言わず落ち着いた表情でキッチンカウンターにもたれかかった。
「本当に手際いいな」
その何気ない言葉に、心のどこかがざわつく。
――沙羅にも、同じセリフを言われたことがあった。
けれど、それは「料理くらいしか取り柄がない」と言わんばかりの棘のある言い方で、素直に受け取れるものではなかった。
一方で、奏多君の言葉は違う。
瞳にも声にも、余計な打算や皮肉はなく、ただ純粋な感心が込められていて――胸の奥がじんわりと温かくなるのを感じた。
こんなふうに、素直に認めてもらえるのがうれしくて、お礼を伝えながら、冷ましておいた玉ねぎをひき肉やパン粉、調味料と一緒に混ぜていった。