年下敏腕パイロットは想い焦がれた政略妻をこの手で愛して離さない

「それに、懐かしい光景だな」
カウンター越しに腕を組みながら、奏多君がどこか懐かしそうな表情を浮かべる。
「え? どういうこと?」
問いかけると、彼は穏やかな笑みを浮かべながら、ゆっくりと口を開いた。

「昔、母さんが料理をしているのをよく見ていた。ハンバーグの種をこねるところとか、今みたいに。なかなか体調を崩してからは見られなかったけど」
柔らかな笑顔を浮かべながら話すその姿に、お義母さまとの大切な思い出が詰まっているのだと感じた。

「そっか……お義母さまの味には到底かなわないと思うけど……」
正直な気持ちを口にすると、奏多君はすぐに 「俺は望海の味を楽しみにしてるから、大丈夫」 と、迷いのない声で返した。

――まただ。
こういう言葉をさらっと言えてしまうのは、天性のものなのか、それとも経験の賜物なのか……。

どちらが年上かわからなくなるくらい、私は完全に翻弄されている。
――絶対、今の私は赤くなってる。
ストレートに褒められることなんて、ほとんどなかった。
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