年下敏腕パイロットは想い焦がれた政略妻をこの手で愛して離さない
――たとえば、夏の夕暮れ。

家族ぐるみの食事会で、大人たちの長話に飽きた子どもたちは庭へと飛び出し、元気に遊び始めた。
けれど、沙羅はいつものように私を置いて他の子たちの輪に入り、私はただひとり取り残されてしまった。

どうしようかと立ち尽くしていたそのとき、征爾兄さまがふと足を止める。
優しく微笑みながら、そっと手を差し出してくれた。

『望海。こっちおいで。一緒に遊ぼう』
穏やかな声と、その温かい手のひらが、あのときの私にはどれほど心強かったことか。

「征爾兄さまは、どんなときでも公平で優しくてね。沙羅ばかりを気にかける父とは違ったんだ」
思い出を語るうちに、自然と口元がほころぶ。

「でも、どうして気づいたの?」
そう尋ねると、奏多君は軽く肩をすくめた。

「いや、なんとなくだよ。この間の撮影のとき、知り合いかなって思っただけ」
確かに、父が征爾兄さまを呼んでいたのだから、そう思うのは自然なことなのかもしれない。

「奏多君は、征爾兄さまと一緒に仕事をしたことある?」
奏多君と征爾兄さまは六歳差がある。指導にあたったこともあるかもしれない。
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