年下敏腕パイロットは想い焦がれた政略妻をこの手で愛して離さない
「木村機長って、本命の人いるの?」
「え? 知らないわよ。小さいころ知ってるだけで、社会人になってからはほとんどプライベートで話すことなんてないし」
「そうなんだ」
そのとき、メッセージの通知音が鳴る。
奏多君からだった。スマホを開くと、美しい透き通った青空の写真が添えられている。
「なによ、その写真見てにやけてたのか。鷹野機長から?」
私の手元を少し覗き込んで、呆れたような芽衣の言葉を聞き流し、スマホに指を滑らせる。
【きれいだね。ありがとう】
そう送ると、すぐに既読がつき、「なにしてる?」という短いメッセージが届いた。
「友人と食事してる」そう返すと、間を置かずに「楽しんで」とだけ返信が返ってきた。
きっと奏多君は気を使ってくれたのだとわかっているのに、そのメッセージに、ほんの少しだけ寂しさを覚える。
誰と一緒にいるとか、少しは気にしてくれたりしないだろうか――そんな思考がよぎり、慌てて打ち消す。
スマホの画面を落とし、テーブルに置いた。私たちは政略結婚で、互いのことには干渉しないと契約している。
だから、こんな気持ちは彼にとって迷惑なだけだ。
余計な感情を振り払うようにグラスを手にしてビールを一口飲むと、何事もなかったかのように芽衣に笑顔を向けた。