年下敏腕パイロットは想い焦がれた政略妻をこの手で愛して離さない
パイロットとして、そして父の息子として、常に完璧でなければならない。少しの油断が、取り返しのつかないミスにつながる――そんな世界で生きてきた。
だから、気を張り続けることは当たり前で、疲れを感じても、それすら意識しないほど慣れていた。
それなのに、望海といると、いつの間にか肩の力が抜けている。
彼女のそばでは、気を張らなくてもいい。ただ自然に、そこにいられる。それが、不思議で、そして心地よかった。
「どれだけ怒っているお客様も、若林チーフと話をすると、最後は笑ってるらしいですよ」
後輩のパイロットたちが、昔そんな話をしていたのを思い出す。
望海は自分の価値を低く見がちだ。家族の影響で自己評価が低くなっていることも、俺は知っている。
けれど――本当の彼女は、有能で、魅力的な女性だ。それは、俺だって昔からわかっていた。
その記憶を辿ると、なんとなく、その後輩に対して牽制するようなことを言った気がする。
軽く流すつもりだったが、俺の言葉に、後輩は驚いた顔をしていた記憶がある。
あのときから、俺の中で望海はなにかが違ったのだろうか。