年下敏腕パイロットは想い焦がれた政略妻をこの手で愛して離さない


そして、助手席側へと回ると、なんの躊躇もなくドアを開け、私が降りるのを待っていた。
ここは、もう覚悟を決めるしかない。こういう場所では、堂々としているのが一番だ。
深く息を吸い込み、一応、お嬢様としての振る舞いは身についているはずだと自分に言い聞かせる。

奏多君が軽く手を差し出すのを見て、少しだけ戸惑いながらも、その手を取る。
すると、彼はごく自然な動作で私の手を引き寄せ、その流れで私は彼の腕にそっと手を添えた。

「鷹野様、いらっしゃいませ」
エントランスを入ると、待ち構えていたかのように支配人らしき男性が姿を現し、丁寧に頭を下げる。

「ご無沙汰しております。今日はよろしくお願いします」
奏多君が穏やかな口調でそう言いながら、軽く会釈をする。さすが大企業の御曹司と言わんばかりのスマートな対応に感心しつつ、私もそれにならって挨拶をする。

「妻の望海です。よろしくお願いいたします」
そう続けると、支配人の男性はにこやかに微笑みながら、私に視線を向ける。

「とても美しい奥様ですね」
四十代後半くらいだろうか。落ち着いた雰囲気の支配人の言葉に、思わず恐縮してしまう。

「そうなんです」
隣で奏多君がさらりと言い切った瞬間、私は耳を疑った。
支配人に褒められたことも驚きだったが、それ以上に、彼が当たり前のように肯定したことに羞恥が募る。
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