年下敏腕パイロットは想い焦がれた政略妻をこの手で愛して離さない


ほんの一瞬の静寂が、やけに長く感じられた。私はその視線を受け止めたまま動けずにいると、彼はゆっくりと立ち上がった。
私の前まで来ると、奏多君は私の全身に視線を向けた。

「ごめんね、お待たせ。いろいろ手配してくれてありがとう……変じゃないかな?」
あまりにも奏多君に見られている気がして、矢継ぎ早に言葉を発してしまう。

「きれいすぎてびっくりした」
ストレートな言葉に、私の顔は真っ赤になっているはずだ。どう返せばいいのかわからず戸惑っていると、奏多君が私の腰を引き寄せ、やわらかく微笑んだ。

「周りの男には見せたくないくらい」
耳元で低く響く声に、肩が震える。こんなシチュエーションはずるい。本物の夫婦のような彼の態度にドキドキしながらも、せっかくなら楽しまなければ損だと思い直す。

「奏多君こそ、女の人たちがみんな見てたよ」
そんな言葉遊びのようなものだが、楽しくなってしまう。今日ぐらい好きな人とデートをしていると思っても、罰は当たらないだろう。
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