年下敏腕パイロットは想い焦がれた政略妻をこの手で愛して離さない
「……じゃあ、飲もうかな。車はおいていけばいいし」
「え?でも……」
驚いて見上げると、彼はワインリストを手に取っていた。
「飲みすぎないようにするし大丈夫だよ」
そう言いつつ、「食前酒は泡を。あとは料理に任せてもいいですか?」奏多君はそう微笑んだ。
コースのメインに私は魚を、奏多君は肉を選び、グラスに注がれていくシャンパンをじっと見つめた。
少し前までは、こんなふうに好きな人と向かい合って食事をするなんて、考えもしなかった。仕事ができるだけでも十分だと思っていたし、一生実家で父や母のために生きていくのだと――そういう運命なのだと、諦めていた。
父のために結婚させられたはずだったのに今、私はこんなにも幸せを感じている。
そのことに気づいた瞬間、ふっと息を吐いた。まるで、自分の立場を完全に忘れてしまっているようで、少し怖くなる。