年下敏腕パイロットは想い焦がれた政略妻をこの手で愛して離さない
空港内のカフェテリアでなにか食べようか、そんなことを考えながら、同僚に声をかけてバックヤードを歩いていた。そのとき、不意に名前を呼ばれる。
「望海」
この空港内で私をこの名前で呼ぶ人は限られている。そして、この声には聞き覚えがあった。
「木村機長……」
振り向くと、そこには征爾兄さまが立っていた。
兄さまが私を呼び止めることなど、今までほとんどなかった。いったい何事かと、私は自然と彼の方へと駆け寄る。
「今日の夜、少し時間取れるか?」
その意外な言葉に、私は思わず怪訝な表情を浮かべたのだろう。結婚をしている以上、たとえ兄さまとはいえ、二人で出かけるのは気が引ける。
「今じゃダメですか?」
そう問いかけると、兄さまはわずかに眉根を寄せた。