年下敏腕パイロットは想い焦がれた政略妻をこの手で愛して離さない
「お前のために言ってるんだぞ」
「なんのことですか?」
さらに問い返した瞬間、兄さまは私の手を取り、近くの会議室へと引き入れた。
「征爾兄さま!」
驚きと戸惑いのあまり、思わず昔のように呼んでしまう。すぐに手を振りほどこうとするが、兄さまはそれよりも早く、静かに扉を閉めた。
「どうしたんですか?」
戸惑いながら尋ねると、兄さまは深く息をつき、まっすぐに私を見つめる。
「なぜ、あんな政略結婚を了承したんだ?」
「え?」
唐突な言葉に、思わず瞬きをする。
「また父上の命令に逆らえず、望まない結婚をさせられたんだろ。俺がお前を助けてやる」
兄さまの手が私の肩に置かれる。その真剣な瞳には、本気でそう考えていることが滲んでいた。
確かに初めは父の命令に従うしかなく、結婚を望んでいたわけではなかった。それは否定できない。
けれど今の私は、あのころと同じ気持ちではない。
「征爾兄さま、もういいんです。私はこの結婚を、今は――」
言いかけたところで、兄さまが私の言葉を遮るように口を開いた。