年下敏腕パイロットは想い焦がれた政略妻をこの手で愛して離さない
「いつもの店でいいか?」
そんな水沢の問いに同意しつつ、俺たちは歩き始めた。そして一軒の店の前で足を止めた。
パリに来るとよく行く店は観光客も訪れるが、地元の人たちにも愛されている店で、適度な活気があり気に入っている。入り口には黒板のメニューが掛かり、店内には木の温もりを感じるインテリアが広がっている。
案内された席に二人で座ると、メニューに目を向けた。
オープンキッチンからは、バターの香りとともに、店員たちの陽気なフランス語が聞こえてくる。
「なに食べようかな」
水沢が楽しげにそう言うのを見て、望海もここに連れてきたいな、と思う。そんなことを考えながら、二人でメニューを決め終えた。
ほどなくして、バゲットとオリーブ、そして軽く炭酸の効いたミネラルウォーターが運ばれてくる。
「鷹野、お前最近どうよ」
「ん? どうってなにがだよ」
オリーブを口に入れつつ問いかけると、水沢がニヤリと笑った。
「もっぱら結婚が近いって噂、聞いたぞ」
「は?」
そう答えてはみたものの、どこかで望海とのことが漏れたのだろうか。しかし、そろそろ発表すべきだと考えていたし、ちょうどいい機会かもしれない。