年下敏腕パイロットは想い焦がれた政略妻をこの手で愛して離さない
「まあ……」
だが、望海の許可を得ずに勝手に話すわけにはいかず、言葉を濁した。そのときだった。
壁を挟んだ向こう側から、「えーー!! ショック!」と、日本語が飛び込んできた。
「木村機長がグラハンの若林さんと付き合ってる?!
聞き間違いかと思い、俺は姿が見えないまま、ちぎっていたパンを持つ手を止め、その方向へと視線を向けた。
「そうそう、こないだカナコが会議室に入ったら、二人が親密そうに話して立ってたらしいよ」
「そうなんだ……。これで独身の二大スターがいなくなっちゃったのか」
そんな話が続いていたが、俺の頭の中は今の話でいっぱいだった。
望海と木村機長が幼いころからの知り合いで、兄のように慕っているとは聞いている。だから、ふたりで話すことがあっても仕方がない。そう思うのに、なぜか心は落ち着かなかった。
「ほらな、お前の噂してただろ? 秘書の若林さんって、LATスカイの社長令嬢か。まあ、お前ならそれぐらいの人と結婚するよな。でも、あのきれいな人、うらやましいわ」