年下敏腕パイロットは想い焦がれた政略妻をこの手で愛して離さない
「誰でも知ってるだろ。若林さんと言えば、"天使" って言われてる人だぞ。優しくて、思いやりがあって、きれいで……それなのに浮いた噂ひとつない。高嶺の花すぎて、みんな憧れの人を見るような気持ちなんだろうな。お前だって知ってるだろ?」
もちろん知っている。何しろ、彼女は俺の妻だ。そう口に出しそうになるのを、なんとか耐えた。
望海が自己肯定感の低いままでよかったと思ったのは、初めてだ。
もし彼女が自分を正当に評価できていたら、今ごろ俺と結婚していなかったかもしれない。
そんな情けない考えを、これまでの人生で一度もしたことがなかった俺は、今度こそ大きく息を吐いた。
「鷹野?」
そんな俺に、どうしたといわんばかりに水沢が顔を覗き込む。
「なんでもない。食べよう」
そう促して料理を口に入れたが、さっきまで感じていたおいしさは薄れていた。
望海と一緒なら、どんなファストフードでもおいしく感じるのは――俺の気持ちが満たされているからなのかもしれない。
食事を終え、俺たちはホテルへ戻った。
交通の便がいいホテルのひとつで、ロビーに足を踏み入れると、静かで上品な空気が広がっている。
フロントで部屋の鍵を受け取ろうと歩き出した、その瞬間だった。