年下敏腕パイロットは想い焦がれた政略妻をこの手で愛して離さない


私は社長をまっすぐ見据えた。

「今、整備の責任を追及してもなんの意味もありません。それよりも、これ以上の被害を防ぐことが最優先です」
「はぁ!? なにを偉そうに……!」
「それとも、社長は『人命より会社の評判のほうが大事』だと、はっきりおっしゃるつもりですか?」
社長の口が開きかけたが、険悪な空気に言葉を飲み込んだ。

私はきっぱりと言い放った。

「邪魔です。出て行ってください」
その瞬間、父の手が私の頬を打った。まわりからも悲鳴が上がる。それでも私は社長を睨み続けた。

そんな私の態度に苛立ったのか、後ろにいた沙羅が前へ出て、言葉を浴びせる。

「はあ? たかが一スタッフでしょう。あなたがいたところで、役に立たないわ」
「あなたたち二人よりはマシです」
ひるむことなく伝えた私に、沙羅が初めて一歩後ろに下がった。そのときだった。

「その通りです、若林社長」
静かだが、怒りを含んだ声が響き、その場が一瞬止まったように思えた。
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