年下敏腕パイロットは想い焦がれた政略妻をこの手で愛して離さない


現れたのは、この会社のトップであり、奏多くんの父でもある鷹野社長だった。そのほか、役員、そして征爾兄さまの姿もあった。

「あの、社長。これは違うんです。この社員が勝手なことを言うので……」
言い訳がましく慌てて言いながら、後ろに手を隠す父を見て、周りにいたスタッフが声を上げた。

「若林チーフは、現場を混乱させる社長に正論を言っただけです。それなのに、社長は社員に手を上げました」
独裁のような父を前に、そう言ってくれた同僚に感謝しつつも、私はこの場を終わらせるために頭を下げた。

「鷹野社長、本当に申し訳ありません。このお話はあとで説明をさせていただきます」
まっすぐにそう伝えると、鷹野社長は大きく頷いた。社長であり、私の義父である前に、奏多くんのお父様でもある。何よりも心配をしているのは彼だろう。

そして私も。奏多くん。早く……。
そう思ったときだった。

前方のタラップから降りてくる人影が見えた。
奏多くん。しっかりとした足取りで、後ろの炎に視線を向けながら降りてくる姿に、一斉に声が上がる。

「よかった……本当によかった」
とうとう緊張の糸が切れて、座り込んでしまった私を、鷹野社長が支えてくれる。
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