年下敏腕パイロットは想い焦がれた政略妻をこの手で愛して離さない
「触らないでもらえますか」
「え? だって、望海とは仕方なく一緒にいるんでしょう? お父様が無理をいったから。だから、私が奏多さんを救ってあげようと思ったんですよ。望海は征爾兄さまに任せればいいです」
沙羅が筋書きを暴露しつつ、奏多君に手を伸ばす。その手をあっさりと払うと、奏多君はさらに冷たい視線を向けた。
「俺との結婚の噂や、木村機長にあることないことを言ったのは、あなたですか?」
「え? 真実を伝えただけよ」
沙羅はなにが悪いのと言わんばかりにそう言うと、私を見た。
「望海が私より幸せになることなんて許されないの。望海のものはすべて私のもの」
そう言った瞬間、征爾兄さまが「沙羅、お前……」と声を漏らした。
なにかを悟ったのか、目を見開いていた。
奏多くんは小さく息を吐くと、私に視線を向けた。
「望海、心配かけてごめん」
その表情、その言葉を聞いて、私はとうとう耐え切れず涙が零れ落ちる。この状況で、きちんと伝えてくれた言葉は、何より信じられるものだった。
「お疲れさまでした」
涙を拭いてそう答え、頭を下げると、奏多くんも小さく頷いた。そしてすぐに鷹野社長の方へと歩いていく。