年下敏腕パイロットは想い焦がれた政略妻をこの手で愛して離さない


「ご心配をおかけしました」
静かにそう頭を下げる奏多くんに、社長は冷静に言葉を続ける。
「事故調査委員会の報告を待とう。とりあえず、記者会見や対応で忙しくなる」
「はい」
今、奏多くんと感動の再会をすることも、私たちの誤解を解くことも許されない。その中でも、さっき沙羅とは関係がないとはっきり伝えてくれたのは、彼なりの誠意だと思う。

そうホッとしたとき、広報かマスコミの取材の人間が入ってきて、「原因は?」などと騒ぎ始めた。
鷹野社長は毅然とした態度で、その人たちを一喝すると、「記者会見まで待ってください」と言葉を発した。

「若林社長! 機体の修理などは万全だったんでしょうか?」

「私は知らん、なにも知らん」

「どうして! なんで! 望海が? 許さない!」
そんな言葉を後ろに聞きながら、私は一度も振り返ることなくその場をあとにした。

< 260 / 274 >

この作品をシェア

pagetop