年下敏腕パイロットは想い焦がれた政略妻をこの手で愛して離さない

父はすでに社長を辞任していたが、沙羅はまだ会社に籍を置いている。出席できない理由はなかった。
ただ、あの事故の日にすべてを諦めたのだと思っていた私は、まさかこの場に現れて声を上げるとは予想もしていなかった。

「この結婚は、本当は私との話だったんです。望海は私の姉で、ただ長女だからと父が無理やり結婚をさせたんです。かわいそうな姉なんです」

会場がざわめく。
沙羅は涙を浮かべ、さらに続けた。

「姉はかわいそうなんです。仕事ができないばかりに、せめて家の役に立てと、無理やり結婚をさせられて……。好きな人が木村機長だったのに……」

その筋書き。やっぱりそうだったんだと思う。
おそらく征爾兄さまにも、「望海はあなたを好きだ」「助けてほしい」と吹き込んでいたのだろう。

「私は奏多さんとの結婚を渋ったから、姉が代わりに。だから、姉は木村機長と付き合いつつ、奏多さんとも……二股を……」

話の内容が前に聞いた噂と変わってきていることに、沙羅自身は気づいていないようだった。
以前は「私が奏多くんの婚約者で、望海が横恋慕している」という設定だったのに、もう通用しないと悟ったのだろう。

そのときだった。
奏多くんが冷静な声で口を開いた。

「言いたいことはそれだけですか?」

沙羅は焦ったように言葉を続ける。
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