年下敏腕パイロットは想い焦がれた政略妻をこの手で愛して離さない


「くだらない噂を流していたのはすべてあなた。私は何度もあのラウンジを使ってきたの。あなたのことも、あなたの心の醜さもよく見ていたわ。自分自身を省みなさい」

沙羅は言葉を失い、膝から崩れ落ちるようにその場に座り込んだ。

会場は静まり返っていた。
そんな中、会長がやさしく微笑みながら奏多くんに言う。

「奏多、あとは自分の言葉で説明なさい」

「……はい」

奏多くんは私に微笑みを向けてから、前を向き直り、会場に語りかけた。

「皆様、本日はお騒がせして申し訳ありません。私は、私自身の意思で――愛する若林望海さんと結婚いたしました。そして、妻も同じ気持ちだと信じています」

その言葉に、女性社員からはため息交じりの悲鳴、男性社員からは喝采が起きる。

「これからも二人で力を合わせ、仕事に邁進してまいります。今後とも、よろしくお願いいたします」

会場は大きな拍手に包まれた。

挨拶を終えたあと、私は莉子ちゃんたちに、身分を隠していたことを詫びた。

「どうして謝るんですか?」
莉子ちゃんは首を傾げた。

「逆だったら……たしかに少し驚くけど、チーフは肩書きに頼らず、立派に仕事をしてきたじゃないですか。誇ってください」

その言葉に私は目を見開き、すぐに「ありがとう」と返した。
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